マイクレベル調整用アッテネータの製作

アッテネータ・・・・、それは電気エネルギーを無駄に消費する事で弱める回路(機能)のこと。
愛車のバイクVFR750F(RC36)に多機能アマチュア無線機FTM-10Sを取り付け、そして業務用のマイクを使用した自作ヘッドセットで無線運用をしているのですが、業務用マイクだけあってマイクアンプ内蔵の豪華な設計


しかし、FTM-10Sが要求するマイクの入力レベル2.5[mVrms] ± 1[mVrms] に対して、EMAマイクの出力レベルは約 250 [mVp-p] ≒ 88 [mVrms] とかなり大きいため、そのまま接続して喋っても入力飽和してしまうことがわかりました。

https://…/2009/09/04/ マイク入力アッテネータの実験のはずが・・・

そこでアッテネータを製作してマイクの信号レベルを小さくすることにします。

設計

まずはアッテネータ回路。これはブリッジT型アッテネータを基本として、ブレッドボード上で減衰量 1/30 の回路を実験したところ想定どおりに動作したため、これに決定です。

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・ブリッジT型アッテネータ


次に減衰量。これは計算で理論値を求めてもその通りにならない可能性が高い・・・・

  • マイクの風防対策等を施したことにより、マイクから発生する信号レベルもいくらか小さくなっている可能性がある
  • あくまで机上での実験により測定した出力レベル 88 [mVrms] を元に減衰量を計算しても、実環境ではその前提から異なっている可能性がある(正弦波ではないからピーク値は一緒でも実効値がもう少し低い)

というわけで、材料費も安いので複数のアッテネータを製作してカットアンドトライすることにします。
そこで減衰量の設定を・・・・

  1. まずは理論値 88 [mVrms] を基準に計算した減衰量 1/30
  2. おそらくこの理論値は『最悪値』であるため、実際の使用域では減衰量が大きすぎると想定され、1/20,1/10,1/5,1/3,1/2,1/1

としました。

https://…/2009/08/27/ マイク入力アッテネータの定数計算

続いて、それぞれのアッテネータに必要な回路定数の計算と、実際の抵抗部品の値であるE24系列に当てはめた部品の定数・数量の選定。

減衰量
[倍]
デシベル
換算[dB]
R[Ω] R1[Ω] R2[Ω] R 部品定数R1部品定数
{+}は直列接続
R2部品定数
{/}は並列接続
1 0.0  0 0.0 0.0  --- --- ---
2 -6.0  2,0002,000.0 2,000.0 2kΩ(×2) 2kΩ 2kΩ
3 -9.5  2,0004,000.0 1,000.0 2kΩ(×2) 2kΩ+2kΩ 1kΩ
5 -14.0  2,0008,000.0 500.0  2kΩ(×2) 6.8kΩ+1.2kΩ1kΩ/1kΩ
10 -20.0  2,00018,000.0222.2  2kΩ(×2) 18kΩ 680Ω/330Ω
20 -26.0  2,00038,000.0105.3  2kΩ(×2) 20kΩ+18kΩ 820Ω/120Ω
30 -29.5  2,00058,000.068.9  2kΩ(×2) 56kΩ+2kΩ 220Ω/100Ω
R1 = R × ( 10(G÷20) - 1)
R2 = R ÷ ( 10(G÷20) - 1)

G……減衰量[dB]


最後に物理設計。これらをどのように実装するのかですが、理想を言えば当然無線機の直前に設置してノイズ混入の可能性を小さくしたい・・・。
しかしあいにくケーブルを切断するなどの大手術が必要となるため、今回の実験では車体前方に設置の『接続ボックス』内とすることにしました。ここで弱めた信号がエンジンの横を通って無線機にいくまでにノイズが混入したとしても、今回の実験ではシカトすることにします。(信号レベルの調整がうまくいった後に、車体後方への設置方法を考えることにします。)

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・接続ボックス内に仮設置することにします

また、回路定数は実験を繰り返すため、簡単に切り替えたい・・・・ピンヘッダを使用したコネクタを設置して、アッテネータ基板を差し替えが出来るようにしておこう。

製作

バイクから外してきた接続ボックスのマイク配線をブッタ切り、ピンヘッダ基板を割り込ませます。

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・ピンヘッダと小さく切り取った基板 ・製作したピンヘッダ基板(矢印のヤツ)

このピンヘッダ基板には、今までの接続ボックス内でマイク動作用の直流電源供給回路に手持ちの電解コンデンサを仮で使用していたのを、タンタルコンデンサに置換した回路も乗っています。
ピンヘッダには、マイク入力信号マイク出力信号グランドを接続しますが、接続ボックス内のグランド集結場所(?)は弾性接着剤でガチガチに固めてしまったために手が出せず、PTTスイッチのグランド側圧着端子にハンダ付けです。

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・ピンヘッダ基板をマイク配線に割り込ませました

続いて、アッテネータ側。小さい基板にピンヘッダと、予め計算した値の抵抗を取り付けます。
コチラは、減衰率を変えて複数個製作します。

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・アッテネータ基板製作中 ・とりあえず1つ完成~♪

できあがった基板は、短絡防止&耐震のため弾性接着剤で固めて、後で分からなくなるため減衰率をマジックで記入しておきます。

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・弾性接着剤で密封作業中(24時間放置) ・マジックで減衰率を書いておきました

ちなみに、取り付け作業前のピンヘッダ基板とアッテネータ基板の接続テストでは・・・・

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・各基板の接続テスト

こんな感じになります。ファミコンのカセットのように、簡単に差し替え可能です。


さあ後は、走行試験をして適切な減衰量を捜し当てるのみ!

https://…/2009/11/04/ アッテネータ減衰量・カットアンドトライ!