フューエルカットリレーの仕組み

愛車のバイクであるVFR750F(RC36)に、長距離走行中の暇つぶしアイテムである"MP3プレーヤーの搭載"と"アマチュア無線機を搭載"をする作業をノンビリと進めています。
今回は、車速に応じて音量を自動制御する『車速連動アンプ』が車速を判断する信号を盗み取るお話しです。結論から言うとそんな信号は無いので、代わりにエンジン回転数を検知できないか検討してみました。

・機種別のサービスマニュアル ・それとは別に共通編もあります

"乗用車+ナビ"ならば車速パルスなんて仕掛けが最初からありますが、バイクにそんなものがあるはずもありません
ホンダの『サービスマニュアル共通編』を読み解くと、フューエルポンプに電源を供給するフューエルカットリレーは、『エンジン回転中にのみポンプを作動させる』作用をします。
その原理は、4つあるイグニッションコイルの1次側制御信号(以下、この日記では1次側制御信号とします。正式な名前はなんていうのか知らないもので・・・)のうちの一つが、途中から分岐してフューエルカットリレーに接続されています。

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・VFR750F(RC36)点火系統図

コイルは、今までと同じ状態を保とうとする性質があります。電流が流れようとすれば止めようとするし、止めようとすれば流れようとする性質が(話を簡単にするため)急な変化ほど強く現れるというあまのじゃくさんなのです。
そして、二つのコイルを近づけておくと、それ同士が連携もします。二つのコイルの巻き数を変えると連携時の電圧も自由に変えられます。
フルトランジスタ式点火のVFR750F(RC36)は、1次側制御信号は点火前に電流を流しておき、その電流を突然止めることでコイルが『止めさせてたまるか!』と電力を発生させ、結果2次側に強力な電圧を発生させています。

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・スパークユニット~点火コイル配線 ・実際の点火コイル

ということは、点火前の1次側制御信号の電圧は(細かいことは抜きにして)トランジスタのコレクタ-エミッタ間電圧0.6[V]と想定(ここまで電圧が低くなると電流が大くなりすぎるため、実際は抵抗で調節されているはず。)され、点火時に14[V]まで突然上昇し、次の点火前にまた0.6[V]というようなパルス波と考えられます。


次にこの1次側制御信号を取り込んでいるフューエルカットリレーの仕組みを調べました。
前出のサービスマニュアルによると単純に、サイリスタをトランジスタ経由の1次側制御信号電流にて駆動しているみたいです。

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・フューエルカットリレーの中身 ・サイリスタ

サイリスタは、通常のダイオードのようにアノードからカソードに対して一方通行の電流を流しますが、最初は非導通なのです。
一度ゲート電流を流し込んでやるとアノード~カソード間が導通し、導通後はゲート電流を切っても導通状態が持続します。しかし、アノード~カソード電流が一定値以下になれば非導通状態に復帰する半導体部品です。
もともと盗んでいる1次側制御信号に対する影響を小さくするためトランジスタで電流増幅していると思われます。


この仕組みにより、一度でも1次側制御信号に電圧がかかるとサイリスタにゲート電流が流れ、フューエルポンプが作動し始めるという仕組みです。
メインキースイッチを捻り、セルモーターを回してクランキングさせるとフューエルポンプが作動するのです。なるほど~。


むむっ、しかし解せません
これだとエンストしたときにフューエルポンプへの電源が切断されないことになります。したがって、フューエルポンプの仕組みも調べなければなりませんでした。
フューエルポンプは、針が二つあり一方通行の弁がついているが注射器をイメージしてください。(すげぇ絵が下手くそだなぁ・・・)

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・電磁石ON・コマを引くので負圧状態になる ・電磁石OFF・スプリングで燃料を押し出すので加圧状態

電源は電磁石に接続されていて、コマを引き寄せます。このときの負圧で燃料タンクより燃料を吸い取ります。コマは電源スイッチを切る形となり、スプリングの力で燃料を加圧しキャブレターに供給するのです。
押し出しが完了する頃に再び電源スイッチが入るので、またコマが引かれて負圧行程に戻るという繰り返しです。また、キャブレターのフロートバルブが閉じているときは燃料の逃げ場がなくなるためスプリングが伸びたまま加圧しつづけるのです。
防爆が要求されるのにこんな単純な仕組みなのか~と感心してしまいました。)


なるほど。
フューエルポンプ自体にもスイッチがあり一回動作するたびに電源が切れる(=電流がゼロになる)ので、フューエルカットリレーのサイリスタが非導通に戻るというわけです。


前置きが長かったですが、フューエルポンプ電源線には、エンジン回転数に比例したパルス信号が盗めそうです。
ココまでの推論が正しいかどうか、実車で計測してみます・・・、ていうか、信号が取れる前提で回路設計進めてしまってます。(←普通逆でしょ。)


ていうか、なんでキャブレター車で、かつキャブレターの真上に燃料タンクがあるVFR750F(RC36)なのに、わざわざリアシート付近まで燃料引き回してポンプで加圧しているの(?) 不思議ですねぇ~。


つづく。