愛車のバイク、VFR750F(RC36)に今年3月、グリップヒーターを取り付けるとともに、壊れていた車載電圧計を交換しました。
グリップヒーターは消費電力が大きいので、適当に使っているとバイク全体が電力不足になるおそれが十分に考えられたため、電力状況の監視は必須であると考えたからです。
https://…/2014/01/26/ 衝動買い!グリップヒーター 203,212.8km
https://…/2014/03/10/ バイク車載電圧計の設置完了と、グリップヒーター設置完了
何度かの試運転を経て、グリップヒーターをツーリングで実践投入したのですが、予想以上に電力喰い・・・・
しかし、あまりにも発電電力が小さいのでは?とのコメントを頂き、一度発電機のコイル断線診断と、発電電圧を測ってみることにしました。
・愛車のバイク、VFR750F(RC36) 写真ではわからないけれど花粉がすごくて汚いの! |
ようやくバイクに触る時間が出来たのて、テスターその他工具を準備して、久しぶりのバイクいじり~♪
そしてカウルを外してみると・・・・予想外の光景が!
・発電機からの電力線。最初のカプラコネクタ |
・・・・_| ̄|○
コネクタが溶けているし、まる焦げ!じゃん。
も~・・・・
SCR式レギュレータから、FET式レギュレータに換装する作業を進めていて、よく発電・電力系のコネクタがよく焼損するから・・・・なんて言っておきながら、なんと良いタイミングで焼けたんでしょう・・・・_| ̄|○
よく見ると3相のうちの1相が断線しているし。どうも電圧が低かったのはコレのせいですね。ビンゴ!
というわけで、少なくともココ一ヶ月はこの状態で走っていたわけだし、明日のツーリングのために、とりあえず断線箇所をビニールテープで絶縁しておこうっと。
ついでに、短距離を走行して問題がないのを確認ついでに、バイク用品店で3sqの電線を買ってこよう・・・・って太い電線売っていないじゃん!(泣)
こういうのって、仕事柄なのかどうしても細かく調査・原因特定しちゃいたいのよね(爆)
以下、報告書風にまとめて速報してみます。
焼損事故調査報告(速報)
1.事実の確認
2014年4月12日に、本件事象を発見した時点で確認した事項は次のとおりである。
1.1. 焼損箇所
- 焼損箇所は、AC発電機からの3本の電線(以下、電力線)に付いているカプラコネクタ(図1参照)であった。発電機を交換する場合に切り離すことができるように設置していると考えられる。AC発電機で発電した3相交流電力が流れる。
- カプラコネクタは、カウルの内側に設置されていて、バイク走行方向と平行に取り付けられている。焼損があったのは、(物理的には)車両前方側であった。
- カプラコネクタは、発電機側とバイク側で構成されるが、焼損は(電気的には)バイク側で、電力線3線のうちの1線のオープンバレル端子のカシメ部分が特に激しく焦げていた。以下、R線、S線、T線とし、焼損していた線をR線と記述する。
- 激しく焦げていた端子部分を中心に、カプラコネクタが溶けていた。またR線の電線被覆も50 [mm]ほど溶けていた。S線、T線の被覆に異常は無かった。
- 焦げていた部分の電線は炭化しており、R線は断線していた。
・【図1】VFR750F(RC36) 発電機~レギュレータ間 配線系統 |
1.2. 車両情報
- 対象車はVFR750F(RC36)。1990年製。総走行距離204,117.7 [km]である。
- 過去に数回、レギュレート・レクチファイア(以下、レギュレータ)の故障を経験し、電力系統の監視のために車載電圧計を取り付けていたが、(おそらく)2013年5月頃から故障して電圧の監視は出来ていなかった。
- 2011年1月末~2月の車検ドック入り時に、該当カプラコネクタが経年により焦げ始めの兆候が見られた(とバイク屋が言っていた)(写真1・2参照)ため、該当コネクタ・端子一式の交換を行った。この際、電力線に関しては交換していない。
・【写真1】2008年7月撮影の該当コネクタ | ・【写真2】2010年12月撮影の該当コネクタ |
- 2009年8月にバッテリーの交換を行った。バッテリー交換後の使用は4年8ヶ月、走行距離4万6千kmであった。
- 2013年8月18日(総走行距離 198,625.6 [km])にエンジンオイル交換時にカウルを外した際、ブログネタとして写真撮影をするが、該当カプラコネクタに焦げの兆候はみられなかった(写真4参照)。また、車検直後との状態の変化もみられなかった(写真3・4参照)。オイル交換時点からの走行距離は5492 [km]であった。
・【写真3】車検後・2011年9月撮影の該当コネクタ | ・【写真4】最終オイル交換時・2013年8月撮影の該当コネクタ |
- 2014年2月にグリップヒーターの取り付けと、車載電圧計の更新を行った。またこの時、該当個所のカウル取り外しは行っていない。カウルが取り付けられた状態では、該当コネクタを目視することは出来ない。
1.3. 使用状況
- 2013年8月18日以降に、主なツーリングとして次の走行を行った。
- 2013年9月:北海道ツーリング(20130911と、2013.09.14,15に猛烈な雨天に遭遇した。)
- 2013年9月:VF/VFR信州ツーリング
- 2013年10月:白馬・黒菱林道ツーリング
- 2013年11月:秩父ショートツーリング
- 2013年12月:房総半島温泉ツーリング
- 2014年3月:伊豆・河津桜ツーリング
- 2014年3月:栃木いちごツーリング
- 2013年9月の北海道ツーリングの際に、強い局所的豪雨に2回ほど遭遇した。1回目は、制限速度以下の速度でも、雨がヘルメットシールド上に膜のように広がり全面視界が確保しづらい状況であったが、強引に走行した。2回めは、道路に巨大な水たまりが出来ていて、ココに巡航速度で突っ込んだ。周りに巨大な水しぶきを飛ばし、ハンドルが取られて転倒しそうになるほどであった。この強烈に雨天時に、該当カプラコネクタに雨水がかかったかどうかは不明である。いずれも、今までこのバイクを乗っていて、経験したことがないような強烈な豪雨であった。
- 2014年2月のグリップヒーター取り付け後の試運転で、バイクの電力状態を電圧計により観察した。当時の状況は日記に記載されていた。
- それによると試運転では、昼間であったためヘッドライトは消灯状態で街乗りをした。グリップヒーターをONにすると激しく電圧が降下し、12 [V]前半であった。
- 2014年3月の伊豆ツーリング場面では、ヘッドライトとグリップヒーターを併用した。この時街乗りでは電圧は10 [V]台まで低下してしまい、有料道路等でエンジン回転を上げているときでも、11.5 [V]に届くか届かない程度であった。
- カプラコネクタ焼損が発覚するまでの間、特にバイクの電装系に不具合を感じず、またセルモーターもスムーズに回っていた。また、焦げ臭さ等の臭気を感じることもなかった。
2. 調査
2014年4月19日に、本件に関して追加の調査をおこなった。
2.1. 各機器・電力線の状況
- 電力系統を構成する機器に、地絡・短絡や故障が発生していないか調査を行った。
- テスターを使用して、発電機コイルの状況を確認したが、地絡・短絡は認められず、また各相のコイルは導通しており、サービスマニュアルに規定している抵抗値を示したため、発電機は正常に機能していた。
- レギュレータの動作状況を確認した。レギュレータは当初ホンダが出荷していた品番から変更されている。このためサービスマニュアルに規定されている各端子間の抵抗値を測定する診断方法では、正しく判定ができなかった。このため予備として保持している新しいレギュレータと値を比較したが、同一の値が測定され、地絡・短絡等の故障は無かった。
- 電力3線の状態を調査した。焼損したカプラコネクタは溶けていてオス側・短絡メス側が分離不能であったため、カプラコネクタから発電機側の電線を切断して調査した。R線とS線の短絡が認められた。S線・T線はそれぞれレギュレータまで導通していた。
- 短絡の状態について更に詳細に調査すると、電線部分に異常は認められず、カプラコネクタ内の端子がコネクタに遊びがあり、R線とS線の端子が接触したり離れたりすることが確認された。
・【写真5】カプラコネクタ拡大 コネクタ嵌合状態で、R線とS線が短絡 |
- バッテリ電圧は12.2 [V]となっていて、特段の異常は見られなかった。
2.2. 発電能力・レギュレータ能力
- 焼損箇所を修理して、発電機~レギュレータが正常に機能するようにしたうえで、車載電圧計により電圧を測定した。
- エンジン始動直後のアイドリング状態では、13.5 [V]付近であったが、1分ほどで14.7 [V]となった。14.7 [V]は、たーさまの体感上の正常時のレギュレータ制御電圧であり、過去にも(バッテリー充電が終わりに近くなるなど)特に負荷が高くない状態であれば常にこの電圧が測定されていた。
- アイドリング状態で14.7 [V]を指す状態で、グリップヒーターを一番低い発熱設定で使用したが、14.4 [V]で均衡した。
- さらに、グリップヒーターを二番目に低い発熱設定で使用したら、14.3 [V]で均衡した。
3. 分析
本項での可能性評価については、次の用語を使用する。
(1)断定できる場合 認められる (2)断定できないが、ほぼ間違いない場合 推定される (3)可能性が高い場合 考えられる (4)可能性がある場合 可能性が考えられる
3.1. 焼損の経緯について
- バッテリーについては、セルモーターが問題なく使用出来ており、電圧も規定範囲内にあることから、容量不足等の問題はなく、異常な充電電流等が流れる等、バッテリー要因による電力線への影響は無かったと認められる。
- 発電機、レギュレータに関しても正常に動作していることから、同機器が要因となって異常電流が流れる等の電力線への影響は無かったと認められる。
- コネクタの焼損は、オープンバレル式端子の圧着部分がもっとも激しく焦げていたため、この部分の抵抗値が増し、また交流発電機からの大きな電流によるジュール熱(Q=i2Rt)で、溶損に至ったと推定される。
- 電線の素材である銅の熱伝導率は398 [W・m-1・K-1]、空気は0.0241 [W・m-1・K-1]であり、端子部の熱が電線の熱伝導の良さにより、コネクタから約50 [mm]までの被覆も溶けたと考えられる。またS線、T線の電線被覆は空気により隔離されているため、溶損しなかったと考えられる。
- 仮に、R線とS線の短絡が最初に起きた場合、R線・S線に異常電流が流れ発熱し、R線・S線それぞれの被覆が同じように溶損するはずであるが、今回はR線の被覆以外に異常が見られないため、他の要因により最初にカプラコネクタ溶損が生じ端子に遊びが生じ、その結果によって短絡が発生したと推定される。
- R線が断線した理由は、発熱により電線自体が脆くなっていたところにバイクによる振動や、短絡による異常電流が重なった可能性が考えられるが、明らかにすることが出来なかった。
- 端子の圧着部分の抵抗値が増加した理由については、経年による振動等により圧着力が低下したなどが考えられるが、明らかにすることが出来なかった。
- コネクタの予防交換を実施したのは2011年1月末であり、少なくとも2年半は問題なく使用しており、初期不良に属する施工不良等は発生していなかったと推定される。
- 雨天走行との関連性については、明らかにすることが出来なかった。
3.2. 焼損の時期について
- 2013年8月のオイル交換時点においては、写真記録より、コネクタ焼損は発生していなかったことが認められる。
- 2014年2月にグリップヒーターと車載電圧計を更新した際の試運転では、グリップヒーターの単独使用状態で電圧が12 [V]前半であった旨が記録されているが、2.2項の調査では14.4 [V]を測定していることから、グリップヒーターを装着した時点では、既にR線が断線していたと推定される。
- グリップヒーター装着後、既に電力線のうちR相が断線しており、発電機からの発電能力の1/3が機能しておらず、電圧計の監視結果において、低めの電圧が観測されたと認められる。
- 焼損事故が発生した時期は、2013年8月以降、2014年2月以前と推定される。ただし正確な時期については(旧)車載電圧計が故障していたことから、明らかにすることが出来なかった。
4. 原因
本件焼損事故は、バイクの振動等により、オープンバレル式端子圧着部分の電気抵抗が増加し、ジュール熱により焼損に至ったと推定される。
圧着部分の電気抵抗がなぜ増加したのかを特定することは出来なかったが、圧着作業に問題があった可能性が考えられる。
5. 所見
今回の事故の発生そのものは防ぐことは出来なかったが、車載電圧計が正常に動作していれば、早期にそれを検出することが出来た。
しかし、車載電圧計は故障しており、それが長期にわたって放置されていたし、たまたまグリップヒーターを装着した際に発覚しただけで、下手をすればずっと発覚せず、ロングツーリング等でトラブルになっていた可能性が考えられる。
車載電圧計は、過去に該当バイクのレギュレータが数回故障した際の教訓として、常々バイクの電圧を監視する必要性から装備されていたが、それが生かされなかった。
故障が放置された理由として
- たまたま最後のレギュレータ交換から故障が長期間発生していなかったこと
- バイクを修理して乗り続けるか、新車を買うかの迷いが生じており、暫くの間、修理対応を控えていたこと
- 走行に影響を与える部分ではない部品であり、問題は無いと考えたこと
が挙げられる。
今後は、故障箇所はすみやかに修理して、万全の状態でバイクを楽しむ必要がある。
以上