USB可般式充電器~今度こそ昇圧回路の実験

ずいぶんと間が開いてしまいましたが、普段持ち歩いているPHS(WX310K 京ぽん2)の電池を移動中に充電するためのモバイルバッテリーを自作してみることにしたのでした。

https://…/2006/10/03/ USB可般式充電器~昇圧回路の実験
https://…/2006/09/22/ USB充電器の作戦思案
https://…/2006/09/15/ USB可搬式充電器

前回のタイトルは『昇圧回路の実験』といっておきながら話が脱線してしまい結局そのまま終了だったので、今回こそは実験なのです。


電気には交流と直流がありまして、『交流は手軽に電圧を変えることができますが電子機器では使い辛い』し『直流は電圧は簡単に変えれないけど電子機器では扱いやすい』といった性質があります。
そして今回のUSB可搬充電器では、直流の電圧を変化させる必要があるのです。
電圧を落とすには電力を熱に変える『レギュレーター方式』や短期間電源供給と切断を繰り返し所定の電圧を得る『スイッチング方式』などがありますが、今回は電圧を上げる必要があるのです。(図中の昇圧回路)

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・構成図

さて、直流の電圧をどのようにして上げるか…
よく使うのは、コンデンサ(ココではバイクのバッテリーのように充電できる部品と思ってください。)を二つ充電します。仮に+5Vで充電をして、ある程度充電が終わったらそれらを直列につなぎ換えると+10Vが得られます。ただし短時間で放電して電圧が落ちてしまうので、高速に並列充電・直列放電を繰り返すチャージポンプ方式』というのがあります。


高電圧側がそんなに電力を要求されない場合はコレでも十分なのですが、今回の目的は携帯電話の充電ですから結構な電力を要求されます…
そこで、今回は『コイルに電流を流そうとすると止めようとするし、電流を切ろうとすると流れようと大きな電力が発生する困った性質』を逆に利用し電圧を上げるチョッパ方式を実験してみます。
そして、そのチョッパ昇圧回路を制御する専用のチップも発売されています。『モトローラ製MC34063A』を使用してどのくらいの性能が出るのか実験なのです。

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・昇圧回路

実験する回路は、チップのデータシートに記載されているもので、私が欲しい電圧値にあわせて各種定数を少しだけ変更したものです。
回路図中央上部のコイルに高速に電流を流したり切ったりを繰り返して(ICの1ピン~2ピン間にトランジスタ・スイッチが存在する。)コイルから逆起電力を生じさせます。そのままだと強烈な逆起電力のノイズが出力側に現れてしまうため、コンデンサとコイルで平滑化するというものです。
設計上では+5Vを与えると2倍に昇圧して+10Vが出力されるはずです。

・ブレッドボード上で回路組み ・主役のチップMC34063A ・無負荷時出力9.44V

まずは負荷をつながずに実験すると、ほぼ予定通りの電圧が出力(DC+9.44V)されています。すばらしい~♪
もう少し詳しく見てみます。

・チョッパ充電中 ・充電時拡大 ・さらに拡大

制御チップは、出力電圧が所定(設計では+10V)を割るとチョッパ動作を始めてコンデンサを充電し、出力電圧が10Vを越えるとチョッパ動作を停止して様子を見るということを繰り返します。
写真ではその様子が良くわかります。
トゲトゲが出ている個所がチョッパ動作中の個所で、コイルの逆起電力によりスパークのような高電圧と、電流投入時に電力を抑えようと少し凹むのが観測され、その後しばらく動作を止めています。


続いて、実際に負荷をつなげての測定です。む、なにやら焦げ臭いニオイがしてきました。
急遽測定を中止してなんとなく要因であろうと想定される、出力側コンデンサの耐圧を大きなものに変更(25V→100V)して再測定です。
コイルの逆起電力の大きさが分からないため、とりあえずの選定でした。少し大きなものに変更です。

・逆起電力84V

なんと、コイルからは約84Vもの電圧が瞬間的に発生しています。コレでは耐圧25Vの電解コンデンサが焦げ臭くなるはずです。でも装置の小型化のためにはなるべく耐圧の低い部品を使わないと全体巨大になってしまいます。


負荷には自作したLEDウインカーバルブ(270mA定電流負荷)を使用しているので、これで入力側の電流値を測定することで効率がわかります。

・ざっくり600mA

自作電源装置の電流値は約600mAを指しています。
正確な測定ではありませんが、10V・270mA(=2.7W)の装置を駆動するのに5V・600mA(3W)と計算されるので、変換効率は90%(?)
おかしいな…、想定だともっと変換効率が悪いはずなのになぁ。どこか計算を間違っているのかな(?)


しかも、入力側の電源装置も定電圧制御出力をしているにもかかわらず、実験回路を駆動すると電圧が3V付近まで低下してしまいます…。おそらくチョッパ周波数が低すぎるためと思われます。
さらに、USBポートが取ることができる電流値は最大500mAと規定されているので、もしバッテリー充電に使用するのであれば充電電流はたったの250mAしか取れないことになります。


などなど…
いろいろと問題がありそうです。